まわりを見回しても雪ばかり。
サスカッチやマーリンが見えるけど他には木以外なにもみつからない。
ゆっくりとではあるが歩いて行くけど目的地のルティエという雪の降る町がみあたらない。
というより、ここも雪だらけ。
「どこいけばいいの〜!!」
【見つからない】
ここに一人のハンターがいた。
名前は
來李
。
鷹のユンをつれて歩くまだなりたての少女。
髪をセミロングにして弓を使った攻撃、そしてユンとのコンビがさまになっているハンター。
性格はシンディスと同じでほとんど怒らないところがあるが、それ以外は優しく感情豊かなギルドでは妹的存在。
來李がルティエに行こうとしたらみんなとはぐれて迷子になってしまった。
そのときから20分前・・・
「來ちゃん、今からシンディスの商人の狩りの手伝いするんだけど、一緒に手伝ってくれない?」
「いいですよ」
今話をしているのはクリスの別の職業であるプリーストのファリエル。
シンディスの商人であるビードロはまだ戦闘の力が弱いためファリエルに手伝ってもらうという。
「で、どこいくんですか?」
「えっと、どこがいいかな」
「それじゃあ、おもちゃで手伝ってもらえるかな」
ビートロが提案したおもちゃとはおもちゃ工場倉庫の上の階、おもちゃ分類場のことを言う。
「わかった、それじゃあ來ちゃん手伝いお願いね」
「はい」
みんなが立ち上がりファリエルがワープポータル、指定した場所に移動する魔法を発動をしておもちゃ分類場のあるルティエの近く、アルデバランという町に飛んだ。
「それじゃああるきになるけどルティエまで行こうか」
「わかりました〜、ユン私の服の中にいな」
ユンは鳥のため寒いのが苦手なのを知っている來李は自分の着ている服の中にいれてあげた。
こうすればユンも雪にかからず、來李も暖かいので一石二鳥でもある。
雪の中、歩いていたら急な猛吹雪におそわれ前にいるはずのファリエルすらほとんど見えない状態だった。
「ファリ、來ちゃん、大丈夫〜?」
「なんとか〜」
「私も大丈夫」
ゆっくりと歩き少し目に雪がはいったため手をかざして行った。
「ファリエルさんとビートロさん、大丈夫ですか?」
無反応。
おかしいと思い前にいるファリエルの腕につかまった。
「ファルエルさん?」
つかまった腕は毛皮のように暖かく、体がでかかった。
〈・・・サスカッチ?〉
つかまれた腕はサスカッチの腕だった。
「わ〜〜!!」
來李はつかんでしまった腕を放し驚きのあまり逃げてしまった。
そして最初の状況のように迷子になってしまった。
「うう・・・、ファリエルさ〜ん、ビートロさ〜ん、どこですか〜?」
迷子のうえ道もついていった身なのでいつもの道と違うためわからなずさまようしかなかった。
「Whisper(WIS)も機能しない・・・パーティー組んでからいくんだったな〜・・・」
あてもなく歩いてもしかたがないので生存確率をあげるため、かまくらを作ることにした。
「こんな雪の中でもこういうのって楽しい〜」
大きく雪だまを作り側面をきって倒し、たおした雪球を人が入れるくらいに雪をかきだした。
「かまくらの完成」
來李はかまくらの中に入り寒さをしのいだ。
もっていた回復アイテムや火矢、そして他の矢などを使い、20本から30本ほどを折り焚き火を作ることにした。
回復アイテムである肉は雪の中の蛋白源ともなるため一応もってきただけのつもりがこんなところで使うことになるとは思ってもいない來李だった。
「ユン、大丈夫?」
「ピ〜」
服の中であっても寒いらしく震えていた。
「寒いよね・・・私も寒いよ」
焚き火をしても外の風向きがかわることがあり何回もけされ、つけの繰り返しをしていた。
「意識を保たないと死んじゃう・・・」
朦朧としはじめた來李は焚き火を強くしようと持っていた矢を半分少しずついれていくことにした。
そこへ怪我をしたハティーベベがゆっくりとやってきた。
「大丈夫?」
ヘティーベベは人の匂いに反応すると、いや攻撃してきたハンターと似た雰囲気でほえはじめた。
「大丈夫、怖くないからいらっしゃい」
警戒心はあるもののゆっくりと近寄り匂いをかぎ來李は安心だとわかったのか近くでゆっくりと倒れててしまう。
「あら、怪我してる」
來李はカバンから携帯している救急用品などで怪我を治療していった。
「痛いけどちょっとがまんしてね」
ハティーベベは軽くうなずき傷口に消毒をしてもらうとうめき声をあげたが我慢をしていた。
ユン用に持っていたものでも意外と治療はできるようで、最後に包帯を巻いてあげて終了した。
「これでひとまずは大丈夫だね」
治療がおわると豪雪の中にもかかわらずハティーベベの親、ハティーのほえる声が聞こえてきた。
「・・・親の所に戻りたい?」
ハティーベベはうんうんと強くうなずいたが足がまだ痛いのか立つこともできなかった。
そんなハティーベベを寒い体を無理しておこし、ハティーベベと荷物をすべて持って親のいる場所まで歩いていった。
今までのように迷子にならない、心配している気持ちが強く感じれる方向に向かって行くとやはりハティーが他の子もつれてさまよい続けていた。
『私のはぐれてしまった子どもはどこにいるの』
ハティーがこう言ったように少し離れたところから聞こえてしまい、心配してるんだなと心から思った來李はゆっくりとかかえながら歩いていく。
そしてついにハティーがいる場所についた。
ハティーは來李がかかえている子どもが傷ついていることを知るや否や來李を攻撃してきた。
『おまえら人間が私の子どもをうばったのか!!』
今度は思ったのではなく、ほんとうにこのように感じた。
耳にはほえているだけだが心に話しかけているハティーだが、怒りを隠せないようだ。
ハティーは豪雪をさらに強め、ストームガストを使う準備をした。
「ハティー、この子を見失っちゃだめでしょ、親ならちゃんと子どものこと見てあげなさい」
來李はモンスターでも優しくさとしてあげた。
ハティーはあっけにとられたが來李がハティーの近くに少しではあるが立てるようになったハティーベベをそっと置いた。
ハティーはその子の匂いをかいだが2種類の匂いをかんじた。
ひとつはハティーベベ自身の匂い。
もうひとつは包帯からで來李と同じ匂いを感じることができた。
そのことを知りハティーは攻撃をやめゆっくりと來李の近くによった。
『娘よ、すまぬ、このように我が子を見てくれたものに手を出してしまった』
「いいの、人間と魔物は普通は戦うもの、攻撃してきたってむりないもの」
『・・・娘のような優しき者もいるのだな』
「えっと、私が優しいかどうかわからないけど優しい人はいっぱいいるよ、ハティーが知らないだけだよ」
『ふっ、だといいな』
笑顔で会話をしている來李だったが限界がきて意識がとぎれた。
心配をしたハティーはかるくつついたがまだ意識だけ失っただけで生きていることを知ると背中に來李をのせた。
『大いなる自然よ、我の声にこたえ怒りを静めたまえ!!』
ハティーが大きなこえでさけぶと雪が静まり、すっかり雪がやんだ。
『子ども達、行くよ』
多くのハティーベベはうなずき、傷ついたハティーベベも気遣ってかハティーが背中にのせてゆっくりと歩いた。
数十分後・・・
來李が意識を取り戻したが雪の中ではなく暖かなベットの上だった。
台所と思われるところから何かをきざんでいる音、近くの暖炉から火が燃える音、暖かな雰囲気のあるレンガ造りの家だった。
「・・・ここは?」
「おや、気がついたのかい?」
台所にいた一人の中年の女性がゆっくりと近づいてきた。
「ここは私の家だよ、ルティエの町の前で倒れてたあんたをみつけたからつれてきたのさね」
「・・・っつ!」
お礼を言おうとしたが体がまだ凍傷で体中がいたむ。
「お〜い、あんたらのつれ起きたよ」
「ほんとうですか!?」
数人がかけよってきた。
シンディス、クリス、そして二人から呼ばれたのかオマメもいた。
「ごめんね〜!!探したんだけどみつからなくて、心配だったよ」
「私こそごめんなさい・・・迷子になっちゃって」
「あの雪の中だと手をつないでいけばよかったと反省してる」
「ファリエルさんやシンディスさんのせいじゃないよ」
「でも、私がさそわなければ・・・」
「はい、そこでネガティブ思考の考えは終わり、來李、セージ、トウガラシ、ヘンルーダー、セイヨウノコギリソウなどから作った私特性の凍傷のための特効薬をお風呂の後にぬりな」
「うん、オマメさんありがと」
「体まだ寒いでしょ、早くはいってきなさい」
「はい、おばさん、お風呂おかりしますね」
「あいよ、ゆっくりとしていきな」
お風呂場にくると花の匂いがして気分が楽になってくる気がした。
少し色がかわっているが、さっきの花の匂いの元はここからだとわかりゆっくりとできた。
数十分後・・・
「お風呂あがりました、おばさんありがとうございました」
「いいって、それじゃあご飯も作ったから温かいうちにたんとみんなで食べなさい」
「やった」
來李はおなかもすいていたので席にすわり、シチューや小さめな器に入ったラザニアなどをたべた。
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした、デザートのケーキも作っているから少しみんなでまってなさい」
「わかりました」
來李やシンディス、ファリエルやオマメはソファーのある場所まで行きゆっくりとした。
「オマメさん、さっきお風呂でお花の匂いしたんですけどあの匂いってなんなんですか?」
「あれ?あれはローズマリーっていう花だよ、その花」
オマメが指をさした方向には紫に近い色の花があった。
「あれをいれたのはなんでですか」
「ローズマリーには血行促進作用があって來李のように体が冷え切った人にもいいし、筋肉疲労や肌をひきしめる効果もあるから今日みたいな日にはぴったりかと思ってね」
「へ〜、そんな効果あったんですか」
「そう、あ、ちょっと気になったんだけどルティエ前で倒れてたっておばさんが言ってたけどそれまでの記憶ってないの?」
「あ〜、俺もそれはきになってた、來ちゃん、覚えてるところだけでもいいから教えてくれない?」
來李は迷った後の話をしはじめ、最後に倒れてからの記憶がないと説明をして終わった。
「ん〜、モンスターに遭遇しても攻撃されないってことも不思議だけど、それ以上にルティエ前になぜ?」
「あんたら何の話をしてるんだい?」
おばさんがケーキのスポンジを焼いているので4人のところにやってきて話しかけてきた。
「えっと、この子がどうしてルティエ前にいたのかというので、外で倒れてから起きるまで記憶がないそうなので」
「・・・それはきっとハティーがこの子をつれてきてくれたんだと思うよ」
「え!?」
おばさん以外の一同全員驚き、問いかけた。
「ハティーってルティエまでの縄張りであるあの大きな狼ですか!?」
「そうだよ、ハティーはもともと大人しい性格で狼なのに優しい心のためにみんなから好かれていた存在だったんだよ」
「それがなぜ今のような・・・?」
「聞いた話、魔にとりつかれたって聞いたことがある、でも一ヶ月に一度今日みたいな雪が大吹雪になって急にやむとき、魔がいったん離れてもとの優しいハティーに戻るみたいだよ」
4人はそのことを聞いて冗談だろう、と思ったが來李だけは目の当たりにしているため冗談じゃないとわかった。
「まあ、今日は優しいハティーがいる日なんだ、だからつれてきてくれたのさ」
おばさんは話し終わってから豪快に笑いながら台所にもどった。
來李はそれからみんなが話していてもだまって今までのことを考えていた。
〈魔にとりつかれているモンスターは多くいる・・・でもハティーはなぜ一ヶ月に一回元に戻るの?〉
このことが頭の中で渦のようにまわりながら考えていた。
「ケーキ焼き終わったよ、それと今日は遅いからうちで泊まっていきな、ベットはお客用は二つしかないから二人ずつで寝て」
「なにからなにまでありがとうございます」
「いいって、こんなところだけどゆっくりしていきな」
「はい、お世話になります」
ケーキを食べ終わるとみんなは疲れから眠りに入った。
來李だけをのぞいて・・・
來李は数分前に意識をとりもどしたユンを抱いて家の屋根の上にのぼり星をながめていた。
「眠れないの?」
「ファリエルさん・・・ええ、ちょっと考え事をしてたら眠れなくて」
「そう、私もちょっとね」
「「どんな考えを?」」
二人して同じ質問をしたため來李は一歩ゆずり自分から質問をこたえた。
「じつはハティーの魔が一ヶ月に一回魔が離れるとおばさんがいったことが頭から離れなくて」
「あれはおばさんの冗談じゃないの?」
「いえ、おばさんは本当のことを言ってました、でもその原因がわからないのでそのことを考えていたら」
「そうなの、でもそういうことはマジシャン系の人に聞いてみたら?そのことも勉強してると思うし」
「マジシャンですか・・・ハンターやめてマジシャンになって勉強してみよっかな」
「なんで、マジシャンの知り合いとかいるでしょ」
「いますがそれでも聞いてみるより自分で知りたいという気持ちがあるので」
「わかった、でもユンともわかれなければいけないんだよ?」
「大丈夫です、じつはこのユンはお父さんがハンターしていたときの鷹の子なんです、でももう鷹としてもこの子は年で私と戦っても苦しめるだけなので少し休ませてあげないと」
「そうなんだ、じゃあハンターをやめてユンを休ませてあげるのね」
「はい」
來李は心から誓って言った。
「それじゃあ私も來ちゃんの質問の答え言うね、私もプリーストやめてもう一度アコライトからやってみようと思うんだ」
「え!?」
「このプリーストってやってても楽しいんだけど私のやりかたが間違っているのかよくみんなを戦闘不能にしちゃうことがあるから」
「でも、守り通したこともあるんですよね」
「あるけどそれでももう一度勉強しなおしてちゃんとマグヌスやキリエエレイソンなどをうまく使えるようにならないと」
「そうですか、それじゃあ私はマジシャンにファリエルさんはアコライトになってがんばりましょう」
「うん、二人でがんばろ」
ゆっくりと楽しい思いを胸に、そしてハティーの体が冷たくも心温まる優しさ、みんなの心から心配してくれたことを感謝をしながら今日は來李とファリエルは眠った。
最初の画面へ
小説選択画面へ